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東大を目指して、本当に入れるという幸福

大学の友人が本を出しました。


大石さんは絵本から出てきたような恰好をしているので、東大のキャンパスでは大変目立ちました。いろいろと表現活動をされていたのは知っていましたが、単著を出すとは。恐れ入ります。
本の内容は、彼女が平凡な中3から夢見る東京を目指して奮起し、ついに東京大学の文科三類に入学するというものです。毎年東大生が出るような学校ではないとのことで、大変努力されたのだと思います。東大合格までの軌跡が出版されることはこれまでにもありましたが、彼女の作品は本人が描いたコミックエッセイである点が目新しいです。

東大を受けることすら珍しいような学校から実際に東大に入ることが難しいのは想像に難くありません。その点、私は公立校でもある程度の進学校にいたのが幸いでした。では、彼女はどうして高い壁を飛び越えられたのでしょうか。
本書によると、学校の先生に指導を乞うのはもちろん、予備校にも通ってかなり勉強したそうです。それも高校生になってから3年間。予備校では、普通に東大に入るような学校の友人もできたと書いてありました。夢を追うための環境を調えるだけの経済力が、彼女の家庭にはあったわけです。

一般的に、親の経済力と子の学力には相関があります。これまでにもいくつかの調査でそれが示されてきました。教育社会学という分野の研究成果です。最近でも、次のような調査結果が発表されています。

親の年収多いほど高い学力 文科省、初の全国調査朝日新聞2014年3月28日
 小6の国語A(A問題は知識中心)では、年収200万円未満の平均正答率が53%、年収1500万円以上は75・5%。算数B(B問題は知識の活用を問う)では、200万円未満が45・7%、1500万円以上が71・5%。年収が上がるほど成績が高かった。中学でもほぼ同様の傾向だが、国語Aと数学A・Bでは1500万円以上より1200万~1500万円未満の方が高かった。
-引用おわり-

極端な例を挙げれば、親が働きづくめのために子が家事の一切を負い、さらに勉強するための広い机、または勉強に集中できる環境(部屋)がないような場合、家庭学習の効果があまり期待できないでしょう。また、勉強するより家事をしろ働けといわれるような家庭で育てば、勉強に価値があるとは思えなくなるでしょう。塾に通えば当然その分だけ成績は上がりますが、経済力の影響は塾に通えるかどうかだけではありません。そもそも子を勉強する気にできるかというところでも影響があります。家庭の経済力や物質的ないし精神的な余裕の度合いによって、子の学力は大きく変わります。

私はこんなblogを書いているくらいなので、大学進学後はいつも経済格差による教育格差をどうにかできないかと考えてきました。タダゼミユースサポートネットのような活動や、manaveeには強い関心と尊敬の念をもってみてきました。その中で知ったいくつかの「教育困難家庭」については、想像を超えた勉強することへの保護者による妨害がありました。それと同時に、どんなに悲惨な環境にあっても、夢に向かって奮闘する若者たちの姿を見ることができました。この頑張ろうとする気持ちこそが、ほとんど何も持たない若者にとって、最大の武器であると私は信じています。

かつての私や冒頭の大石さんがそうであったように、頑張ろうとする気持ちがあれば、無理だといわれた高い壁に挑むことができます。そこで実際に乗り越えられるのは簡単な話ではありません。ただ、仮に壁を越えられなかったとして、その原因が本人の努力不足と多少の運にのみ帰せられるであれば、それは公正な社会だと思います。
東京に来て、大学に入って、私と似たような境遇の学生は案外たくさんいるもので、大学受験というものはある程度公正な競争なのかなとも思いました。一方で、先に述べた「教育困難」な環境にある若者を見て、どれだけ努力してもそこから抜け出せそうにないような彼らの姿を見て、耐え難い悲しみを覚えたのも事実です。この理不尽をどうにか是正できないでしょうか。


最近では、親の経済力による教育格差というものは新聞やテレビでも取り上げられるようになりました。先日のTVタックルでもmanaveeをつくった花房さんが出演されてコメントしていました。また、下村文科省大臣も出演されていて、同様の問題意識を持っていることを述べられていました。しかし、大臣の話ではボランティア活動や人物評価といったものを試験に導入することで家庭の経済力による教育格差の問題を是正できるということでした。
前にも述べたように、ボランティア活動など「評価」できるような実績を積めるのは、そういうことに精を出すだけの余裕を持った家庭の子であって、経済的にハンディキャップを負う子にとってはペーパーテスト以上に困難なものなるでしょう。本当にやるべきことは、思い込みに基づいた教育制度設計をやめて、現実に基づいた制度設計を行うことであり、その中で既存の問題点を解決することでしょう。

頑張ろうという気持ちを持った若者はいます。困難を前にして怯まない若者はいます。しかし、無限の力を持っているわけではありません。彼らが圧倒的な理不尽の前に倒れるより早く、まともな大人が手を差し伸べる必要があります。
意欲を持った若者が、しっかりと能力を身に付けて、社会に羽ばたいていけるような制度が必要です。
今日でも、そんな制度が少しは存在します。そのおかげで私はここまで来られました。
しっかりと機能しているのです。だから、もっと増えてほしい。
そうすればきっと、あの子たちも・・・。
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2件のコメント

[C677]

高3になる女子です。いつも勉強の合間に読ませていただいています。
できれば、ブログこれからも続けてください♪私も東大目指して頑張ってます!
  • 2014-03-29
  • 小春
  • URL
  • 編集

[C678] Re: タイトルなし

小春さん

ありがとうございます。勉強頑張ってください!
振り返ってみても、東京大学での学生生活は楽しくてかつ充実したものでした。
  • 2014-04-06
  • othmer
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othmer

Author:othmer
下流社会から東大を目指した。
東京大学工学部卒業。
同大学院工学系研究科。

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