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EVとFCV

実家でのんびりと箱根駅伝を見ていたら、トヨタから発売された燃料電池車(FCV)ミライが走っていました。
FCVが一般道をちゃんと走れますよと一般の視聴者に知らしめる目的があったのかなと思いました。5区の途中で選手を追い越して、トップの青学の後ろに付けてゴールまで見守っていました。テレビ中継にもたっぷり映りましたね。
片道108 kmは日産リーフでも走れるように見えますが、暖房しながら標高差860 mの箱根の山登りを考えると厳しさがあります。EVでも電池が大きいテスラなら余裕ですが。
(調べてみたら以前はホンダのFCXクラリティも走っていたようですね)

トヨタからミライが発売されたことで、新聞などでは水素社会の到来が叫ばれています。
かつては夢だったFCVが市販されたのです。技術の進歩、社会の発達を確実に感じます。

一方で残念なのが、先進技術の間で優位性を示すために他の先進技術を貶すような言動が見られることです。FCVを持ち上げるためにEVを、EVを持ち上げるためにFCVを悪くいう。一般の方が適当に書いている文章だけでなく、新聞や雑誌でものを書いているような人達まで、誤った認識をもとに他方を批判していることがあります。そういう仕事なのかもしれませんが、残念です。

さて、ここでFCV (Fuel Cell Vehicle)とEV (Electric Vehicle)を簡単に比較してみましょう。
従来のガソリン車やディーゼル車は、燃料を燃焼させてエンジンが生み出した動力で走ります。これに対して、FCVとEVは電気でモーターを回して生み出した動力で走ります。モーターを回す電気をどうやって供給するのかで、FCVとEVの違いが生じます。
FCVは燃料電池で発電し、EVは蓄電池に充電しておいた電気を使います。
燃料電池は燃料電池上で化学反応(たとえば2H2 + O2 -> 2H2O)を起こすことで、化学反応で放出されるエネルギーを電気エネルギーとして取り出します。燃料電池は結局のところ反応式で書けば水素燃焼と同じですが、熱ではなく電気の形でエネルギーを取り出すので効率が非常に良いという特徴があります。現在、燃料の水素は化石燃料由来のものが使われていますが、将来的に自然エネルギー由来(風力発電で水の電気分解など)で生産できるようにするなると予想されるため、究極のエコカーと呼ばれます。
EVは蓄電池に発電所でつくった電気を充電しているだけです。現在日本国内の電源構成は火力発電が主ですが、こちらも将来的には自然エネルギーをはじめとしたクリーンな電源に移行すると予想されるため、究極のエコカーと呼ばれます。すでに個人では、家庭に設置した太陽電池で自動車と家庭の消費電力を賄っている方もいるようです。なお、ガソリンエンジンの熱効率に比べて火力発電所の熱効率が何倍も高いので、EVが化石燃料由来の電力を使ったところでなおEVの方がエコであるそうです。

FCVとEVはモーターにどうやって電力を供給するかが違うだけですが、その違いが大きな違いです。
燃料電池も蓄電池もエンジンに比べれば技術開発途上のものであり、それぞれ利点と欠点があります。

FCVよりEVが先に発売されたように、どちらかというとEVの開発が先行しています。
そもそも電池はエネルギー密度が小さいことが問題でした。自動車を動かせるエネルギーを小さな体積・重量に詰め込める電池がありませんでした。現在EVが市販されているのは、リチウムイオン電池のおかげです。リチウムイオン電池が発売されてから四半世紀の技術開発を経て、高エネルギー密度と低価格、安全性が達成されたのです。あとはモーターにつなぐだけ。そうはいっても電池がまだまだ高価なのと、エネルギー密度が小さいために航続距離が短いといった問題があります。そのうえ充電に時間がかかるので短時間に長距離を移動できません。航続距離の問題は、テスタのように大量に電池を載せれば解決できますが、車体価格が電池価格のためにとても高価になります。EVはリチウムイオン電池というある程度確立された技術のおかげで実現しましたが、理想にはまだ遠いといったところです。
FCVはようやく発売されましたが、以前から一般道を走れるFCVは作られていました。問題は価格です。自動車用の燃料電池は室温から数十度で化学反応が効率的に進むように白金触媒を使います。白金なので非常に高価です。そのため、燃料電池の開発では使用する白金量の低減と、白金を代替する安価な触媒が主要な課題です。燃料電池の価格が下がらないと普及は難しいでしょう。また、燃料の水素は常温常圧で気体なので取扱が大変です。ガソリンが液体なのとは違います。高圧の水素ガスを扱える水素ステーションをガソリンスタンドのように整備するのは長い時間と大変な費用が必要です。
それでもEVではなくFCVが期待されるのは、やはりエネルギー密度です。タンクに水素を詰め込めばそれだけ航続距離が伸ばせます。水素を燃やしているようなもので、航続距離についてはガソリン車と同じように心配いらないわけです。自動車を動かすには莫大なエネルギーが必要です。日産リーフが200 km走るのに20 kwh使いますが、これは一般家庭1~2日分の消費電力量です。乗用車でこの航続距離ですから、長距離トラックのように荷物をたくさん載せて重たい車を長距離走らせようと思うと、FCVが現実的です。

FCVとEVの特徴をまとめてみましょう。
・FCV
2014年末にトヨタから発売
高出力、長距離走行可能
燃料電池が高価 (技術開発で低価格化進行中)
水素供給インフラ整備に費用、時間がかかる (高圧水素を扱うため)
・EV
2014年末で日産、テスラなど各社で市販
長距離走行困難 (重量、価格)
蓄電池が高価 (技術開発で低価格化進行中)
送電網は全国にあるが、充電に時間がかかる (普通充電はコンセントでOK、急速充電は特別な設備必要)

これらの特徴を見てみると、以下のような使い方に合わせてFCVとEVを選ぶ・使い分けることになると予想されます。
FCVは決まったルート、長距離
EVは決まったエリア、短距離
長距離トラックや高速バスはFCV、集配車や路線バスはEV、乗用車はその人の使い方に合わせて選ぶことになると私は考えています。


FCVにしろEVにしろ、一昔前は夢の技術でした。それが多目にお金を出せば買える時代になってきています。これはかなりエキサイティングな状況です。
自分の車を買うのはまだ先の話だとは思いますが、はじめて買う車が内燃機関を持たない車であったら良いなと思います。
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6件のコメント

[C687]

東大工学系の院について質問します
ブログ主さんは東大の工学系の学生であったとのことですが、東大の内部生はその内何割が院試験に落ちるものなんでしょうか?
学科にもよるとおもうのですが、もしわかれば電気系、化学工学系について特に聞きたいです
よろしくお願いします
  • 2015-01-04
  • 大学生
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  • 編集

[C688]

突然コメントしてすみません。私は家計が苦しく、三大予備校にはとてもじゃないけど行かせてもらえません。月々1科目1万ちょっとの個別指導塾に1科目だけなら通ってもいいと言われました。浪人時代の予備校費用はどうしていましたか?

[C689] Re: タイトルなし

>大学生さん
工学系研究科の入試情報に、内部と外部の志願者数・合格者数が出ています。
参考にしてください。

http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/for_prep/general_number.html
  • 2015-01-05
  • othmer
  • URL
  • 編集

[C690]

こういうデータがあるんですね、ありがとうございます

結構落ちてると思ったのですが、落ちた人はそこから就活を始めても間に合うものなのですか?
  • 2015-01-05
  • 大学生
  • URL
  • 編集

[C691] Re: タイトルなし

>ampmさん
私とっても運がいいことに、は貯金がぎりぎり足りました。
高校3年間、民間の財団から給付奨学金をいただいており、これを貯めていました。
大学の入学金30万円は、河合塾のスカラシップ(成績優秀だと授業料の一部が返還される制度)で捻出できる計画でした。

同期には浪人中にバイトして学費を捻出しながら勉強している人もいました。

どのような状況にあるかわからないので漠然とした話になりますが、浪人するなら大学卒業までの資金計画も含めてよく考えた方がいいと思います。
もちろん浪人しないに越したことはありません。ただ、学費の関係で私立に行くより浪人して国立の方が安上がりかもしれません。地方より3大都市圏の方がバイトが見つかりやすいかもしれません。そもそも何のために大学へ行きたいのでしょうか。
万が一浪人するとして、塾に通うとして、そこに何を求めますか。私は教材を選定してもらえること、一緒に東大目指して競争できるライバルがいること、家とは違う勉強するための場所という機能を河合塾に求めました。特に苦手だった数学は「大学への数学」で対応しました。論述が苦手だからとZ会を使う人もいました。限りある資金から最大の成果を引き出せるように頭を使いましょう。
そして何より重要なのが、目標達成の可能性です。現役でセンター足切りになる人が浪人して東大を受けたところで受かりそうにないですよね。理想を高く持つのはいいことですが、勇敢と蛮勇は違います。ただ、虎穴に入らずんば虎子を得ず。足切りから翌年受かる人も1%くらいいるようです。このあたりはもはや賭けの領域ですから、うまく保険をかけながらどこまでリスクを取れるか決断する外ありません。

長々と書きましたが、若者にとって最大の資産は自信の頭脳です。
俗説を鵜呑みにせず、定量的に、ロジカルに考えて、大胆に行動しましょう。
  • 2015-01-05
  • othmer
  • URL
  • 編集

[C692] Re: タイトルなし

機械系は産業界から需要が大きいので、4年の秋から学部卒でも推薦で就職できます。大手自動車メーカも行けるそうです。
電気系も似たようなものですが、電気系は産業界がやや元気がないので機械系ほどではありません。

その他の学科はあまり景気のいい話を聞かないので、厳しいのではないでしょうか。
人気のある学科では院試浪人する学生もいます。研究生として卒論の研究室に置いてもらうようです。
  • 2015-01-05
  • othmer
  • URL
  • 編集

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Author:othmer
下流社会から東大を目指した。
東京大学工学部卒業。
同大学院工学系研究科。

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